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東京地方裁判所 平成5年(ワ)9489号 判決

甲事件原告(反訴被告)・乙事件原告

株式会社A銀行

(以下「原告」という。)

右代表者代表取締役

宇井偉郎

橋本好央

右訴訟代理人弁護士

篠崎芳明

金森浩児

甲事件被告(反訴原告)・乙事件被告

B社

(以下「被告B社」という。)

右代表者

乙川一夫

甲・乙事件被告

乙川一夫

(以下「被告乙川」という。)

右両名訴訟代理人弁護士

池内精一

主文

一  原告と被告らとの間において、原告が被告らに対し別紙「事実」記載の事実に関して何らの債務を負担していないことを確認する。

二  被告らは、原告に対し、左の行為をしてはならず、又は第三者をして左の行為をさせてはならない。

1  別紙店舗目録記載の原告の本店及び支店所在の建物の外壁から三〇〇メートルの範囲内において、拡声器又は街宣車を用いて、原告の名誉信用を毀損し、誹謗中傷するなどの内容にわたる演説を行うなど原告の業務を妨害する一切の行為

2  別紙「文書の内容」記載の内容を記載した文書を頒布する行為

三  被告B社の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  原告の請求

1  甲事件本訴

主文第一項と同旨

2  乙事件

主文第二項と同旨

二  被告B社の請求(甲事件反訴)

1  (主位的請求)

原告は、被告B社に対し、朝日新聞、毎日新聞、讀賣新聞、産経新聞及び日本経済新聞の各全国紙版に、別紙謝罪広告記載の内容の広告を別紙掲載条件記載の条件で各一回掲載せよ。

2  (予備的請求)

原告は、被告B社に対し、一万円及びこれに対する平成七年三月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  原告は、被告らに対し、「マル暴関連リスト」と題する文書(甲一。以下「本件リスト」という。)に被告B社の名が記載されていたこと及び本件リストがマスコミ等に流出したことに関して、被告らの原告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権等が存在しないことの確認と、被告らが原告の名誉を毀損し、誹謗中傷する内容の街宣活動を行うなど業務を妨害する行為等の差止めを求め、被告B社は、原告に対し、原告が本件リストを作成してマスコミ等の外部に流出させ、被告B社が暴力団であるかのような印象を与え、その社会的評価を低下させたとして、不法行為(名誉毀損)に基づき主位的に謝罪広告掲載、予備的に損害賠償を請求している。

二  争いのない事実等

1  原告は、銀行業を営む株式会社で、別紙店舗目録記載の店舗で営業している。被告B社は、昭和五六年三月三〇日政治資金規正法六条一項の規定により自治大臣に政治団体の届出をした政治団体(権利能力なき社団)であり、被告乙川は被告B社の代表者である。

2  日本テレビ放送網株式会社(以下「日本テレビ」という。)は、平成四年五月二〇日午後六時〜七時放送の「ニュースプラス1」というニュース番組及び同日午後一一時三〇分〜翌午前〇時二五分放送の「きょうの出来事」というニュース番組で、「不祥事件等報告について」と題する文書(乙二。以下「本件報告書」という。)に関連した放送(以下「本件放送」という。)を行った。また、第一二三回国会衆議院大蔵委員会において、同月二七日、本件報告書の写しが大蔵委員や政府委員に配付された上、衆議院議員甲野一郎(以下「甲野議員」という。)が本件報告書に関連した質問を行い、大蔵省銀行局長らとの間で本件報告書に関する質疑応答(以下「本件委員会質疑」という。)が行われた。

3  本件報告書の末尾には本件リストが添付されており、本件リストは、冒頭に「マル暴関連リスト」と標題が付され、中程に挙げられたある企業について、その「系列・地位」として「丙山会三代目会長丙山春夫親交者B社シンパ」、「コメント」として「(B社―右翼政治結社・会長は丙山会旧○○一家元総長)」との記載(以下「本件記載」という。)がある。本件報告書及び本件リストには、本件記載の外に被告らについての記述はない。(甲一、乙一)

4  被告B社は、平成五年二月八日付け原告会長丁海夏夫あて書面(甲二、乙四の1)をもって、原告に対し、本件リストに被告B社の名を記載した理由、本件リストをマスコミや甲野議員に配布した理由、被告B社の名誉回復をどのように行うつもりか、被告らに対し公に謝罪するか等について同月二二日までに回答するよう要求をした。

これに対し、原告は、被告B社に、同月二二日付け書面(乙四の2)で、原告が本件リストを作成したかどうかは事件発生から長期間経過し関係資料処分済み等のため現時点では確認できないこと、したがって本件リストが原告の責任の下に作成されたことを前提とした質問には答えられない旨の回答を行った。

5  原告は、平成五年一〇月八日東京地方裁判所に、債権者を原告、債務者を被告らとする街宣禁止等の仮処分命令を申し立て(平成五年(ヨ)第六四四五号仮処分命令申立事件)、同月二六日主文第二項同旨の仮処分決定を得た(甲六)。

三  原告の主張

1  本件リストに関する被告らの街宣活動及びビラ頒布

本件リストを含む本件報告書は、原告が作成したものとは確認できないし、原告が故意にマスコミや甲野議員等外部に流出させたものではない。

しかるに、被告らは、原告が本件リストを作成、流出させて被告らの名誉を侵害したとして、原告に対し、平成五年二月八日から同年一一月二五日までの間、別紙街宣状況一覧記載の日時、場所において、同一覧記載の車台数欄記載の台数の自動車を用いて、別紙「街宣活動の内容」記載の内容のとおりの発言を拡声器で宣伝する街頭宣伝活動(以下「本件街宣活動」という。)を行った。

また、同年二月九日から同年一一月一日までの間、別紙ビラ頒布・投函一覧記載の発見日ころ、同一覧記載の投函先に、左記見出しが付されたビラ数種(以下「本件ビラ」という。)を、同一覧記載の部数、同投函場所欄等記載のとおり投函、貼付又は配布(以下「本件頒布行為」という。)した。

「許せぬ旧C銀行の『巨悪』」「謀略したA銀行丁海会長ら旧C役員は退陣せよ」「庶民をダマすあくどい『A銀行』」「旧Cが『仕掛人』だ」「裏に旧D潰し」「大蔵・日銀提出の報告書を故意に流出させた」〈省略〉

2  名誉毀損の不成立

(一) 本件リストを含む本件報告書は、原告が作成したものか確認できないし、原告が故意にマスコミや甲野議員等の外部に流出させたものではない。

(二) 被告らは、本件放送や本件委員会質疑により被告らの名誉が毀損された旨主張するが、本件放送には、「B社」「乙川一夫」のテロップや音声は流れておらず、本件リストの全体が数秒写っているだけであり、本件記載は全く読み取れないこと、本件委員会質疑には被告らに関する発言は一切ないことから、本件放送や本件委員会質疑(又は本件委員会質疑に関するテレビ報道)を見た一般視聴者や本件委員会質疑の議事録を見た者に本件記載が目に入る可能性はない。

(三) また、被告乙川が丙山会旧○○一家の総長であったことは自身が認めるところであり、被告B社が暴力団と関係があることは公知の事実というべきであるから、本件記載は何ら被告らの名誉を侵害するものではない。

3  被告らの行為による原告の人格権侵害

本件街宣活動の発言内容及び本件ビラの内容はいずれも事実無根であること、本件街宣活動が九か月間の長期にわたり多数回行われたこと、多いときには三〇支店もの店舗において行う広範囲なものであること、その音量が極めて大きく、東京都の「拡声機による暴騒音の規制に関する条例」(以下「暴騒音規制条例」という。)で禁止されている八五デシベルを頻繁に超過し、時には一〇〇デシベルを超える大音響を出していたこと、本件頒布行為は、本件ビラを原告の本店正面玄関で配布したり、支店の窓ガラスに貼付したりする等、多様かつ悪質な態様で、明らかに原告の業務の妨害、嫌がらせを目的として行われたことから、本件街宣活動及び本件頒布行為により、原告は、その名誉・信用を著しく侵害されるとともに、日々の営業活動に重大な支障を生じた。

原告は平穏に銀行業務を行う権利(営業権)、不法にその社会的評価を侵害されない権利(名誉権)及び不法にその経済的価値に対する社会的評価を侵害されない権利(信用権)等の人格権を有するところ、被告らの右行為は原告の人格権を侵害するものである。

また、被告らは、仮処分決定後である同年一一月二五日にも街宣車一一台により約三〇分間街宣活動を行い、今後も同様の活動をすることが予測される。

4  よって、原告は、原告が被告らに対し別紙「事実」記載の事実に関して何らの債務も負担していないことの確認を求めるとともに、被告らに対し、人格権に基づく侵害排除として主文第二項記載のとおり侵害行為の差止めを求める。

四  被告らの主張

1  原告は、本件報告書を作成して故意にマスコミや甲野議員ら外部に流出させた。故意に流出させたものでないとしても、原告が本件報告書を作成したことは明らかであるところ、これが外部に流出したことについて少なくとも原告に文書管理上の過失があることは明白である(仮に盗難にあったとしても、原告に過失があることに変わりはない。)。

(一) 原告が本件報告書を外部に流出させたため、本件放送や本件委員会質疑が行われ、本件リストが公にされた。その結果、本件放送や本件委員会質疑に関する報道を目にした一般視聴者に被告B社が暴力団であるとの印象を与え、被告B社の名誉が著しく傷つけられた。

(二) 本件放送や本件委員会質疑に関する報道によって本件記載が一般視聴者の目に触れなかったとしても、原告が本件報告書を作成し外部に流出させたため、日本テレビの関係者、衆議院大蔵委員会の各委員、政府委員等多数の者がこれを目にしたことにより、被告B社が暴力団であるとの印象を与え、被告B社の名誉が侵害された。

2  被告B社は、反国体・反日本を標榜する団体等に対する徹底的糾弾、日本国体を損なう為政者・権力者に対する監視・鞭撻・抗議・糾弾を旨とし弱者窮民を救済し正義を全うすること等の運動方針を定め、街宣活動を柱とする政治活動を行う政治団体である。

3  被告乙川は、十数年前まで丙山会旧○○一家の総長であったが、思うところあって仁侠の道を捨て、昭和五六年六月被告B社を再興した。その後、被告B社は丙山会と全くかかわりのない独立組織として政治活動を行い、被告乙川の経歴から生じる「B社イコール丙山会旧○○一家」との誤解を払拭する努力を続け、現在では参議院議員選挙や地方議会議員選挙に候補者を擁立するなど国政や地方政治に参画すべく政治活動に励んでいる。しかるに、本件放送や本件委員会質疑を見聞した被告B社の支援者らから「B社は暴力団であったのか」等の問い合せを受けるなど、その影響は大きく損害は甚大である。

4  よって、被告B社は、原告に対し、不法行為に基づき、主位的に名誉回復措置として謝罪広告の掲載を求め、予備的に損害賠償として一万円及び不法行為後の平成七年三月三日(同年二月二八日付け被告ら準備書面送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

5  原告の被告乙川に対する甲事件本訴請求について

被告乙川は被告B社の代表者として名前を連ねているだけであって、個人として原告らに謝罪を求めているわけではないし、本件街宣活動及び本件頒布行為に個人として関与しているわけではない。

6  原告の人格権侵害の主張に対する反論

本件街宣活動の発言内容及び本件頒布行為の態様は、すべてが被告B社の指示に基づくものではない。また、被告B社は街宣活動の音量について暴騒音規制条例を遵守している。

五  主要な争点

1  甲事件

(一) 本件リストが外部に流出したことにつき原告に故意又は過失があるか。

(二) 本件放送及び本件委員会質疑により被告らの名誉が毀損されたか。また、日本テレビ関係者や政府委員らが本件リストを目にすることになったことにより被告らの名誉が毀損されたか。

(三) 被告乙川に対する確認の利益

2  乙事件

(一) 被告B社の街宣活動及びビラ頒布行為により原告の人格権(営業権、名誉権、信用権)が侵害されたか。

(二) 被告乙川に対する差止め請求の当否

第三  当裁判所の判断

一  証拠〈省略〉によれば、以下の事実が認められる。

1  本件報告書は、「不祥事件等報告について」との標題が付され、報告者、報告年月日、名宛人の記載を伏せて写しがとられた形跡がうかがえる。本件報告書には、「標記のことにつき、次の通り報告いたします。」との記載の後に「1、事故者について」と記載され、氏名、職名、経歴等の記載から、旧D銀行(以下「旧D」ということがある。)の元支店長に係る内部の調査報告であることが分り、「2、経緯」として平成三年六月五日に「特定の先と癒着して不祥事を起こしているという『タレコミ』電話」があり、以降内部調査を開始した旨の記載があり、その後に同年七月四日から同年八月二八日まで事故者とされる者が支店長として在任したと前記経歴欄に記載されている各支店について融資部又は検査部の調査を実施した旨の記載が続き、「関係者からの事情聴取を継続的に実施しており、引続き事件の全貌解明に向けて調査続行中であります。」との記載がある。

また、本件報告書は、事故者とされる者が、浮貸し、私文書偽造、迂回融資、公金着服、金品受領等の不正行為をした疑いがあることについて、取引先の氏名等を特定しながら報告する体裁となっている。本件リストは、事故者とされる者が関与した前記不正行為と関係する取引先の背後関係の説明として本件報告書の別表4として添付されたものであり、「マル暴関連リスト」との標題が付されている。

2  本件放送のうち、平成四年五月二〇日「きょうの出来事」放送分は、日本テレビが入手した原告の内部情報によると、原告の元支店長が巨額の不正融資をしたとの疑いがもたれていること、原告が日本テレビに対し元支店長の不正行為の事実のごく一部を認めていること、日本テレビにこの問題が明らかになったことについての大蔵省の対応等に関する報道及び論評を主な内容とするもので、被告らの名称や氏名は画面テロップや音声に出てこない。また、右放送分には、本件報告書と思われる資料を写した映像があり、そのうち本件リストの一部分又は全体をクローズアップで写したと見られる映像が数秒間挿入されているが、いずれの映像からも本件記載を読み取ることはできない。

また、日本テレビは、同月二七日の「きょうの出来事」というニュース番組で、日本テレビが入手した内部資料と同様の資料に基づいて甲野議員が衆議院大蔵委員会で質問し本件委員会質疑が行われたことに関する報道及び論評を主な内容とする放送を行ったが、同放送には被告らの名称や氏名は画面テロップや音声では出てこない。また、右放送分には、甲野議員が本件報告書と思われる文書を手にしている映像や本件報告書と思われる資料を写した映像があり、そのうち本件リストの一部分又は全体をクローズアップで写したと見られる映像が数秒間挿入されているが、いずれの映像からも本件記載を読み取ることはできない。

また、本件委員会質疑は、原告の元支店長の不正行為につき大蔵省の調査内容や対応を主な問題とするもので、本件委員会質疑の議事録には、本件記載や被告らの名称や氏名は一切記録されていない。

3  甲野議員は、本件委員会質疑において、本件報告書が大蔵省及び日本銀行に提出されたことがあるかを質問したところ、土田正顕大蔵省銀行局長(当時)は本件報告書と同一のものが提出されたということはない旨否定し、本間忠世日本銀行信用機構局長(当時)は提出されたことはない旨否定している。また、本件委員会質疑において、甲野議員は本件報告書の入手先について一切明らかにしていない。

被告B社が、日本テレビ社長氏家斎一郎あてに、平成五年一月七日付け書面をもって、本件放送中に使用した本件リストに記載された企業に裏付け取材をしたのか、日本テレビは旧C銀行(以下「旧C」という。)又はその近い筋から資料の提供を受け放映を依頼されたのではないか等と質問する書面を送付したところ、石川一彦日本テレビ取締役報道局長(当時。以下「石川報道局長」という。)は、同月一九日付け書面をもって、本件放送で使用した資料は原告作成のものであることを日本テレビで確認したこと、本件放送は、原告の元支店長の不祥事に対する原告の処理及び大蔵省・日本銀行の対応を取り上げたもので、個々の融資先の社名については配慮していること、本件リストに被告B社の名が掲載されている旨を報道したとの前提に立つ質問には応じられない旨を回答した。被告B社は、再度同年二月八日付け書面をもって、旧Cから依頼されて本件放送を行ったものか等日本テレビに質問したところ、石川報道局長は、同月一八日付け書面をもって、本件放送で使用した資料は原告の責任において大蔵省・日本銀行に報告されたものであることは取材で確信を持っているが、入手経緯については報道機関として答えることはできない旨回答した。

被告B社は、日本社会党山花貞夫委員長(当時)あてに、同月一日付け書面をもって、本件委員会質疑で甲野議員が使用した資料につき、原告と無関係な被告B社の名が記載されていたために迷惑を被ったこと、そのような資料に基づき本件委員会質疑を行った甲野議員を離党させる等すべきではないか等の質問をしたところ、中沢健次日本社会党中央本部総務局長(当時)は、同月一六日付け書面をもって、本件委員会質疑には被告らについての言及がなく、甲野議員が本件委員会質疑において銀行作成の報告書であることが明らかな文書の写しを示し、その添付資料中に被告B社に関する記載があったことをもって被告らの名誉を傷つけるものとは考えていない旨の回答をした。

4  被告B社は、その綱領、運動方針等を集約した社誌(乙一の1)には、「反国体・反日本を標榜する団体等に対する徹底的糾弾」、「日本国体を損なう為政者・権力者に対する監視・鞭撻・抗議・糾弾を旨とし弱者窮民救済し正義を全うす」ることを運動方針とし、街頭演説、街頭宣伝活動(街宣活動)等を行うとある。また、月刊「××」は株式会社××出版が発刊している被告B社の機関誌である。被告B社は現在支部支局が全国に約三〇か所あり、登録されている構成員は三〇〇〇人弱である。

平成四年八月二九日付け朝日新聞に、金丸信衆議院議員(当時。以下「金丸議員」という。)が平成二年秋に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を訪問したことにつき、当時被告B社らが右訪問を「土下座外交」と非難、攻撃し、大規模な街宣活動を準備したことに関して、金丸議員が丙山会戊田秋夫前会長(以下「戊田前会長」という。)に右街宣活動による攻撃中止のあっせんを依頼し、戊田前会長のあっせんを受けて被告B社が直ちに右街宣活動を中止したことが明らかになった等の記事が掲載された。

平成三年六月の被告B社再興一〇周年記念の挨拶状(甲三)には、特別後援者として戊田秋夫、特別後見人として丙山春夫の氏名が記載されている。

被告乙川は、昭和三八年ころから昭和五五年まで稲川会○○一家と呼ばれる団体の総長という地位にあったが、右地位から退いて昭和五六年六月被告B社を再興し、その後同被告の代表者(会長)の地位にある。

被告B社が街宣活動を行うかどうかは被告乙川を含めた被告B社幹部の協議により決定され、街宣活動の現場の指揮を執るのは被告乙川以外の幹部であるが、被告B社が行う街宣活動や「××」の号外等のビラ配布については被告乙川に事前又は事後に報告される組織体制となっている。

5  被告B社は、平成五年二月八日から同年一一月二五日までの間、別紙街宣状況一覧記載の日時場所において、同一覧記載の車台数欄記載の台数の自動車を用い、別紙「街宣活動の内容」記載の内容の発言を拡声器で繰り返す街宣活動を行った。その態様は以下のとおりである。

同年二月五日から同月二四日までの街宣活動では、旧C系勢力が旧D系勢力を陥れるため本件報告書を外部に流し、本件放送や本件委員会質疑に関し旧C系勢力から日本テレビや甲野議員に対し金銭が動いた可能性があること、このため暴力団とは何ら関連のない企業が迷惑を被っていることを主な内容としていたところ、同月二五日の街宣活動に至って初めて本件リストに被告B社の名が記載されている旨発言されるようになった。

同年五月一〇日、同月一二日、同月一八日、同月二五日、同月三一日、同年六月一日、同月一四日、同月一五日、同年七月一日、同月二日、同月一九日、同月二〇日、同月二六日、同月二七日、同月二八日、同年八月二日、同月三日、同月九日、同月三一日、同年九月七日、同月八日、同月一四日、同月二〇日、同月二二日、同月二七日、同月二八日、同年一〇月四日、同月五日、同月八日、同月一九日、同月二五日、同月二六日、同月二七日、同年一一月二五日の街宣活動は、原告本店正面玄関前における音量測定で、時として八五デシベルを超える音量で行われており、うち五月一八日、六月一四日、七月一日、同月二日、同月二〇日、同月二七日、同月二八日、八月二日、同月三日、同月九日、同月三一日、九月七日、同月八日、同月一四日、一〇月八日、同月一九日、同月二六日、一一月二五日などにおいては九〇デシベルを超える音量で行われ、そのうち八月九日、一〇月八日、一一月二五日など一〇〇デシベルを超える音量で行われる日もあった。

6  被告B社は、平成五年二月九日から同年一一月一日までの間、別紙ビラ頒布・投函一覧記載の発見日ころ、同一覧記載の投函先に、次の記載のある「B」又は「××号外」と題するビラを、同一覧記載の部数、同投函場所欄等記載のとおり投函、貼付又は配布(本件頒布行為)した。

すなわち、被告B社の同年三月発行の「B号外」(甲五の2。以下「B号外」という。)には、「旧C銀行の卑劣な策謀!!『A銀行』」「丁海会長ら旧C役員は退陣せよ」「大蔵日銀提出の報告書を故意に流出させた」「真面目な企業や人々をマル暴と名指ししたが事実無根だ」「旧Cが作った問題の報告書はマスコミに配布された」等の見出しが付され、本文冒頭に「CD合併時に旧C銀行首脳たちが仕組んだD銀行追い落としの謀略の中で、(中略)ゆえなくして政治結社B社の名を『マル暴関連リスト』に掲載した」「旧C首脳に対して、断固・糾弾、その謝罪を求め」ているなどの記述があり、「××不正追求号外第2弾」(甲五の3。以下「第2弾ビラ」という。)には、「旧Cが『仕掛人』だ!!」「仕組まれた謀略に踊った甲野社党代議士と日本テレビ」「裏に旧D潰し」「丁海A銀行会長にデタラメ内部資料作成の根拠を正す」等の見出しが付され、「デッチ上げのニセリストを権力闘争の具にした旧Cを断じて許すことはできない。その“元凶”は現A銀行・丁海夏夫会長と断ぜざるを得ない」等の記載がある。

また、「××不正追及号外第3弾」(甲五の4)には、「許せぬ旧C銀行の『巨悪』」「謀略したA銀行丁海会長ら旧C役員は退陣せよ」「被害を加えながら知らん顔の厚かましいC銀行首脳」等の見出しが付され、第2弾ビラと同様の記載があり、「××B社特別号世直紙」(甲五の5)には「丁海会長ら旧C役員は退陣せよ」「卑劣な策謀『巨悪』は眠らせない」等の大見出しが付され、前記B号外の本文冒頭の記述と同様の記述の外、「『A銀行』を『△△銀行』とせず行員諸君の奮起で行内浄化を図ろう」「丁海会長以下、旧C系役員たちの卑劣な策謀をそのまま看過しては社会正義はない」「人を傷つけておいて、逆に居直り、“盗人猛々しい”態度の旧C系役員たち」等の見出しを付した記述がある。

二  争点1(一)(本件リストが外部に流出したことにつき原告に故意又は過失があるか)について

1  前示一1のとおり、本件報告書は旧D銀行の元支店長たる事故者が不正融資をしていた事実の調査結果の報告をその内容とし、人事記録や多数の貸出先に対する融資関係資料等銀行内部の資料を駆使し、内部の事情に通暁した者でなければ判明しない事実が解明されていること、右調査をした部署は「融資部」や「検査部」と記載されていること、前示一2のとおり、原告が本件報告書に基づく日本テレビの取材に対し元支店長の不正融資について一部認めていることから、本件リストを含む本件報告書は原告の内部において作成されたものと認められる。

2  しかしながら、前示一3のとおり、日本テレビ及び日本社会党は、被告らに対し、本件報告書は原告の内部資料と判断していると回答しているものの、その入手経緯を一切明らかにせず、甲野議員も本件リストの入手経緯を明らかにしていないから、甲野議員や日本テレビが本件リストをいかなる経緯で入手したものか不明というほかなく、原告が本件リストを故意に外部に流出したと認めるに足りる証拠はない。この点、被告乙川は、甲野議員以外の知り合いの議員やジャーナリストなど多数の関係者に本件リストの出所について聞いて回ったところ、複数の人物から原告内部の一派が日本テレビや甲野議員又はそれに繋がる者に本件報告書を渡し、金銭を使って日本テレビにスクープ報道をさせたり甲野議員に委員会質問をさせたに違いない等と言われた旨供述するが、被告乙川も右情報提供者の氏名を明らかにしない上、その情報内容自体どのような証拠に基づくものか全く不明であるから、信用するに足りない。

日社の街宣状況

日時

場所

車台数

2月8日(月)

14:00~(約5分間)

本店

3

2月9日(火)

13:10~(約5分間)

麹町支店

3

13:30~(約5分間)

本店

3

2月10日(水)

12:20~(約5分間)

麹町支店

3

12:45~(約5分間)

本店

3

2月15日(月)

12:30~(約10分間)

本店

15

2月16日(火)

13:25~(約5分間)

本店

3

2月17日(水)

12:45~(約5分間)

本店

2

2月22日(月)

12:40~(約5分間)

本店

3

2月23日(火)

12:25~(約10分間)

本店

3

2月24日(水)

12:35~(約10分間)

本店

2

2月25日(木)

12:20~(約35分間)

本店

15

13:20~(約15分間)

市ケ谷支店

15

3月1日(月)

12:45~(約15分間)

本店

2

3月2日(火)

12:40~(約15分間)

本店

4

3月3日(水)

12:35~(約15分間)

本店

3

3月8日(月)

12:20~(約15分間)

本店

3

3月9日(火)

12:45~(約15分間)

本店

4

3月10日(水)

12:55~(約15分間)

本店

3

3月12日(金)

12:15~(約35分間)

本店

12

14:30~(約15分間)

本店

12

3月15日(月)

14:22~(約35分間)

本店

3

3月16日(火)

12:40~(約35分間)

本店

2

17:00~(約15分間)

東京駅

丸ノ内中央口

2

17:15~(約50分間)

本店及び周辺

2

3月17日(水)

12:45~(約25分間)

本店

3

17:15~(約15分間)

東京駅

丸ノ内中央口

1

17:40~(約30分間)

本店

1

3月19日(金)

13:55~(約10分間)

本店

1

3月22日(月)

12:40~(約20分間)

本店

2

3月23日(火)

12:35~(約15分間)

本店

2

3月24日(水)

12:42~(約5分間)

本店

2

3月26日(金)

12:30~(約20分間)

本店

11

3月29日(月)

13:15~(約10分間)

本店

3

3月30日(火)

12:55~(約15分間)

本店

3

3月31日(水)

13:15~(約10分間)

本店

3

4月5日(月)

13:00~(約5分間)

本店

3

4月6日(火)

13:20~(約10分間)

本店

3

4月7日(水)

13:00~(約20分間)

本店

3

4月14日(水)

12:45~(約10分間)

八重洲通支店

3

4月19日(月)

14:15~

千代田生命本社

3

4月20日(火)

12:40~13:50

銀座→東京中央→室町→九段→麹町駅前支店

3

4月21日(水)

12:45~13:45

東京中央→市ケ谷→麹町駅前支店

4月22日(木)

11:55~12:00

八王子支店

1

4月23日(金)

12:15~12:20

八王子支店

1

4月26日(月)

12:40~13:15

銀座支店→東京中央→神田→九段

1~3

4月27日(火)

12:30~(約20分間)

本店

3

13:12~(約10分間)

八王子支店

1

4月28日(水)

12:45~(約10分間)

本店

2

4月30日(金)

12:00~(約5分間)

八王子支店

2

5月10日(月)

12:35~(約30分間)

本店

2

5月11日(火)

13:00~(約10分間)

本店

5月12日(水)

12:54~(約30分間)

本店

12

13:44~(約15分間)

本店

3

15:14~(約5分間)

本店

12

5月17日(月)

15:00~(約20分間)

本店

3

3  次に、被告らは、原告が故意に本件リストを流出させた事実がないとしても、原告に文書管理上の過失があることは明白である旨主張する。しかし、前示のとおり本件報告書がいかなる経緯で日本テレビや甲野議員の手にわたったものか全く明らかでないのみならず、被告らは本件リストが外部に流出したことにつき原告に過失がある旨主張するのみで、具体的にいかなる注意義務違反があるというのか過失と評価すべき具体的事実を一切主張していないことに照らすと、本件リストが外部に流出したことについて原告に過失があるとは認めるに至らない。

また、被告らは本件報告書が現に外部に流れていること自体が原告に何らかの過失がある証拠であり、仮に本件報告書が盗難にあったものとしても原告に過失があることに変わりない旨主張するが、本件リストがいかなる経緯で日本テレビや甲野議員の手に渡ったものか全く明らかでないにもかかわらず原告に外部流出の責任を認めることは無過失の結果責任を認めるに等しいから、右主張は採用できない。

4  そうすると、争点1(二)について判断するまでもなく、被告B社の反訴請求はいずれも理由がない。

三  争点1(三)(被告乙川に対する確認の利益)について

1  被告らは、被告乙川は被告B社の代表者として名前を連ねているだけであって、個人として原告らに謝罪を求めているわけではないし、本件街宣活動及び本件頒布行為に個人として関与しているわけではない旨主張する。

しかしながら、前示一4のとおり、被告乙川は被告B社の代表者であること、被告B社がその名で行う街宣活動やビラ頒布行為はすべて被告乙川を含めた幹部の協議により決定され、その活動、行為の内容はすべて被告乙川に事前又は事後に報告される体制であること等の事実及び被告乙川本人尋問の結果に照らすと、被告乙川は、本件街宣活動や本件頒布行為のすべてに関与し、個人としてもその発言及び記載内容、態様等を容認しているものと認められる。したがって、同被告に対する関係においても、本件リストが外部に流出したことに関して原告が債務を負担していないことの確認を求める利益がある。

日時

場所

車台数

5月18日(火)

13:40~(約25分間)

本店

3

5月19日(水)

12:30~(約20分間)

本店

3

5月25日(火)

12:50~(約55分間)

本店

12

14:00~(約15分間)

本店

5

14:00~(約45分間)

東京駅

4

5月26日(水)

14:40~(約30分間)

本店

11

5月31日(月)

12:45~(約15分間)

本店

3

6月1日(火)

12:40~(約25分間)

本店

3

6月2日(水)

12:30~(約10分間)

本店

3

6月14日(月)

12:45~(約20分間)

本店

4

6月15日(火)

12:55~(約15分間)

本店

3

6月16日(水)

12:40~(約20分間)

本店

3

6月29日(火)

13:30  無言街宣

本店

1

7月1日(木)

12:35~(約15分間)音量極めて大

本店

2

7月2日(金)

12:40~(約40分間)音量極めて大

本店

2

7月19日(月)

12:32~(約16分間)

本店

3

7月20日(火)

12:25~(約33分間)音量極めて大

本店

3

7月21日(水)

12:50~(約15分間)

本店

3

7月26日(月)

12:57~(約10分間)音量極めて大

本店

3

7月27日(火)

街宣 12:55~(約10分間)

(街宣後,役員への面談要求有り)

本店

街宣車

乗用車1

7月28日(水)

12:40~(約8分間)

本店

2

8月2日(月)

12:20~(約10分間)

本店

3

8月3日(火)

12:25~(約15分間)

本店

3

8月4日(水)

14:10~(約20分間)

本店

1

9:30

大音響でゆっくり通過

熊谷駅前

1

9:37

熊谷

1

10:14

深谷

1

11:10

本庄

1

11:05

鳩ケ谷

1

11:45

蕨東

1

12:10~(約5分間)

埼玉本部

1

12:20~(約1分間)

北浦和西口

1

12:27~(約3分間)

北与野(出)

1

12:32

大音響でゆっくり通過

与野

1

13:05

宮原

1

13:20

上尾

1

11:00~(約36分間)

海老名

1

11:13~(約2分間)

上大岡

1

11:20~(約5分間)

弘明寺

1

11:30~(約5分間)

井土ヶ谷(出)

1

12:10~(約9分間)

横浜

1

17:35~(約8分間)

鶴見

1

11:45~(約13分間)

保土ヶ谷

11:47~(約19分間)

等々力

1

12:35~(約10分間)

三軒茶屋(出)

1

13:10~(約3分間)

豪徳寺

1

14:15~(約5分間)

祖師谷

1

12:45~(約30分間)

八王子

3

13:08~(約2分間)

西新橋

1

13:40~(約10分間)

銀座

1

12:45~(約30分間)

14:25~(約10分間)

14:50~(約40分間)

大阪営業部

大阪中央

1

13:55~(約15分間)

名古屋

1

8月9日(月)

15:55~(約10分間)音量極めて大

本店

11

8月30日(月)

12:45~(約20分間)音量極めて大

本店

3

8月31日(火)

13:00~(約25分間)

本店

3

9月1日(水)

12:50~(約25分間)

本店

3

9月2日(木)

14:27~(約8分間)

大阪営業部

3

14:46~(約6分間)

大阪中央支店

3

14:54~(約4分間)

大阪営業部

3

9月6日(月)

12:40~(約10分間)

京橋支店

3

13:05~(約25分間)

本店

3

2  以上によれば、原告の甲事件本訴請求はいずれも理由がある。

四  争点2(一)(被告B社の街宣活動及びビラ頒布行為により原告の人格権が侵害されたか。)、同(二)(被告乙川に対する差止め請求の当否)について

1  被告B社の街宣活動により原告の人格権が侵害されたか

前示一5のとおり、本件街宣活動は、原告内部の旧C勢力が主導権を握り旧D勢力を陥れるために意図的に本件報告書をマスコミ等外部に流出させたとか、国会やテレビ局を利用して自らの恥部、内幕をさらけ出し、権力闘争に利用したとか、原告は被告らを暴力団扱いしているとか、原告の旧C系はでっちあげの資料を権力闘争の道具にしたとか、原告は顧客のプライバシーを公表する等の発言を前示のとおりの態様で繰り返したものである。

しかし、前示二のとおり本件リストが外部に流出したことについて原告に責任があるとは認められない上、前示一2のとおり本件放送の内容及び本件委員会質疑についての日本テレビの放送や議事録からは本件記載を読み取ることができず、本件リストに名が記載された企業や被告らが本件放送や本件委員会質疑により迷惑を被ったとは認められない。それにもかかわらず、被告B社は、前示のとおり原告内部の特定の勢力が権力闘争を有利に運ぶために意図的に本件リストを外部に流出させた等執拗な街宣活動を繰り返したものであって、本件街宣活動は、真実性が証明されない事実を喧伝して一方的に攻撃するものであり、原告の社会的評価を著しく低下させるものである。のみならず、本件街宣活動は、その音量が暴騒音規制条例五条、三条で禁止される八五デシベルを超える日が多数あり、時には九〇デシベルや一〇〇デシベルを超える音量を出した日もあったこと、約一五〇回もの多数回にわたり反覆継続して行われたこと、そのため、甲一〇号証(原告本店総合企画部法務室長佐藤裕洋及び同室調査役西村典晃からの事情聴取報告書)によれば本件街宣活動のため受付電話が聞き取れない、会議の会話が聞き取れない、近隣から原告への苦情が寄せられる、街宣活動の発言内容について顧客から問い合せがある等原告の業務に多大の支障が生じていたことが認められることを総合すると、本件街宣活動は、原告の営業を著しく妨害し、その社会的・経済的信用を低下させるものであって、右信用を生命とする原告の人格権を著しく侵害し、その受忍すべき限度を遥かに超える行為であり、右行為の差止めを認める以外に原告の権利を守ることはできないというべきである。

日時

場所

車台数

9月7日(火)

12:15~(約5分間)

東京中央支店

2

12:45~(約21分間)

本店

2

9月8日(水)

12:50~(約20分間)

本店

2

9月12日(日)

12:00~(約30分間)

河辺支店

2~3

9月14日(火)

12:45~(約20分間)

本店

11

9月20日(月)

12:35~(約13分間)

東京中央支店

3

12:55~(約23分間)

本店

3

14:00頃(支店前を通過)

市ケ谷支店

3

9月21日(火)

13:10頃(支店前を通過)

本所支店

2

9月22日(水)

13:18~(約17分間)

本店

3

9月27日(月)

12:55頃(支店前を通過)

本所支店

3

13:15~(約19分間)

本店

9月28日(火)

13:08頃(支店前を通過)

本所支店

3

13:30~(約15分間)

本店

3

10月4日(月)

12:55頃(支店前を通過)

本所支店

2

13:25~(約15分間)

本店

2

14:45頃(支店前を通過)

麻布支店

2

10月5日(火)

13:10~(約20分間)

本店

3

13:50頃(支店前を通過)

赤坂青山通支店

3

10月6日(水)

13:17~(約15分間)

本店

3

10月8日(金)

12:45~(約15分間)

本店

11

10月19日(火)

13:25~(約12分間)

本店

3

10月20日(水)

12:55~(約5分間)

本所支店

2

13:28~(約4分間)

本店

10月21日(木)

13:00~(約8分間)

本店

2

10月25日(月)

12:55~(約16分間)

本店

3

10月26日(火)

12:57~(約18分間)

本店

3

10月27日(水)

13:06~(約18分間)

本店

2

11月25日(木)

12:15~(約25分間)

本店

11

この点、被告乙川は、本件街宣活動は、原告が本件リストを流出させて被告B社の名誉を毀損したことについての謝罪を求め、かつ、被告B社の質問状に対する原告の回答が無責任であるから反省を求めるためやむなく行った正当行為である旨供述するが、本件街宣活動は本件放送や本件委員会質疑が行われてから八か月以上経過した後に開始されたものであり、原告、日本テレビ及び日本社会党に対する質問状が送付されたのも本件放送や本件委員会質疑が行われてから八か月以上経過した後であること、本件街宣活動は被告B社の質問に対する原告の回答を待たずに開始されていること、平成五年二月八日から同月二四日までの街宣活動は、旧C系勢力が旧D系勢力を陥れるために本件報告書を流出させた、本件リストで暴力団関連企業として挙げられた企業が迷惑を被った等の内容に終始し、本件記載を問題にしていないことに照らすと、被告B社の名誉を毀損されたことに対する抗議行動である旨の前記被告乙川の供述部分は信用できない。

2  被告B社の本件ビラにより原告の人格権が侵害されたか

本件ビラには、前示一6のとおりの記載があり、前示1の本件街宣活動と同様の理由により、本件頒布行為は原告の社会的評価を著しく低下させるものと認められる。のみならず、本件頒布行為は、九か月の長期にわたるもので、その態様も原告の役員の自宅や各支店に投函したり、JR東京駅中央口付近や原告本店付近で配布したりする等執拗かつ悪質なものである。したがって、本件頒布行為は、原告の営業を著しく妨害し、その社会的・経済的信用を低下させるものであり、原告の人格権を著しく侵害し、その受忍限度を超えるものと認められる。

3  被告乙川に対する差止め請求の当否

前示三に認定説示の事実関係の下においては、同被告に対しても差止めを認めるのでなければ実効性がない。

4  そうすると、原告の乙事件請求はいずれも理由がある。

(裁判長裁判官石川善則 裁判官小野洋一 裁判官仙田由紀子)

別紙店舗目録〈省略〉

別紙掲載条件〈省略〉

別紙街宣活動の内容〈省略〉

別紙ビラ頒布・投函一覧〈省略〉

別紙事実

一 本書添付の「マル暴関連リスト」(以下「リスト」という)なるものが平成四年五月二七日社会党所属の衆議院議員甲野一郎が衆議院大蔵委員会で行った質問に用いられた事実に関する件

二 リストが、日本テレビ放送網株式会社放送の平成四年五月二〇日午後六時から午後七時「ニュースプラス1」及び午後一一時三〇分から午前〇時二五分「今日の出来事」に用いられた事実に関する件

三 その他リストに関する一切の件

別紙文書の内容

一 平成四年五月二七日社会党所属の衆議院議員甲野一郎が衆議院大蔵委員会で質問を行う際に各議員に配付し、また同月二〇日に日本テレビ放送網株式会社が放送に用いたいわゆる「マル暴関連リスト」及びその他の内部資料を原告が外部に流出させたかのような記載のある文書

二 原告内部に派閥抗争、権力闘争、主導権争い等があり、またはかつてあったかのような記載のある文書

別紙謝罪広告

当行の内部資料において、「マル暴関連リスト」なるものを作成し、あたかも貴団体が暴力団であるがごとき表現を用いるとともに、同資料を外部に流出させたことによって、同資料を入手したマスコミの一部によって、貴団体が暴力団であるとの前提にたった報道がなされ、さらには第一二三回国会の衆議院大蔵委員会においても右報道を引用する質疑が行われました。

しかしながら、貴団体が暴力団ないしは暴力団と関連を有する旨の当行の資料は誤りであり、かつ、これを外部に流出させたことによって貴団体の名誉を毀損し、貴団体およびその関係者に多大な御迷惑をおかけして申し訳けありませんでした。

ここに謹んで謝罪いたします。

平成 年 月 日

東京都千代田区大手町一丁目一番二号

株式会社A銀行

右代表者代表取締役 ○○○○

同 ○○○○

東京都港区芝二丁目二九番九号榊原ビル

B社

代表者会長乙川一夫殿

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